葬儀当日は、喪主にとって最も忙しく、そして最も人前に立つ機会が多い一日です。その立ち居振る舞いや言葉遣いの一つひとつが、遺族の代表としての品格を示すことになります。悲しみの中でも、喪主としてやるべき役割を冷静にこなしていくことが求められます。まず、朝一番にやるべきことは、葬儀社との最終打ち合わせです。当日の流れ、弔辞の順番、席次などを改めて確認し、心付けなどがあればこのタイミングで渡します。そして、親族が会場に集まり始めたら、喪主として一人ひとりに挨拶をして回ります。遠方から来てくれたことへの感謝や、生前の故人との関わりへの御礼を述べます。一般の弔問客が訪れる前には、受付係をお願いした方々と打ち合わせをし、芳名帳の管理や香典の扱いについて、丁寧にお願いをします。式が始まると、喪主は遺族席の最も上座(祭壇に近い席)に座ります。式の最中は、故人の冥福を祈り、静かに儀式に臨みます。そして、喪主にとって最も重要な役割の一つが「挨拶」です。一般的には、告別式の出棺前と、火葬後の精進落としの席の開始時・終了時に、参列者全体に向けて挨拶を行います。挨拶では、まず参列への感謝、次に故人が生前お世話になったことへの御礼、そして、遺された家族への今後の支援のお願いなどを、簡潔に、そして心を込めて述べます。事前に原稿を用意しておくと安心です。また、儀式の合間には、読経してくださった僧侶への対応も重要な務めです。控室へご案内し、お茶をお出しするなど、失礼のないようにもてなします。お布施も、すべての儀式が終わった後、改めて御礼の言葉と共に、喪主から直接お渡しするのがマナーです。このように、葬儀当日の喪主は、儀式の主役であり、全体の進行を司る司令塔でもあるのです。