葬儀にかかる費用を、物理的に最大限まで抑えたいと考えた場合、最終的に行き着くのが「直葬(ちょくそう)」または「火葬式(かそうしき)」と呼ばれるお見送りの形です。これは、通夜や告別式といった宗教的な儀式を一切行わず、ごく限られた近親者のみで、火葬場で故人とお別れをする、最もシンプルな葬送の形式です。ご逝去後、ご遺体は病院などから直接、あるいは一旦、自宅や葬儀社の安置施設に移され、法律で定められた死後24時間が経過するのを待ちます。そして、定められた日時に、数名の家族と共に火葬場へと向かいます。火葬炉の前で、僧侶を呼ばない場合は、家族だけで静かに手を合わせ、棺の小窓から最後のお顔を拝見し、お別れを告げます。その後、ご遺骨が準備されるのを待合室で待ち、骨壷に納めていただく、という流れになります。お骨上げまで含めても、所要時間は二時間半程度です。この直葬の最大のメリットは、何といっても費用の安さです。儀式を行わないため、式場使用料や祭壇費用、人件費、飲食費、返礼品代などが一切かかりません。費用は、ご遺体の搬送・安置費用、棺、骨壷、そして火葬料金といった、最低限必要なものだけで構成されるため、総額でも二十万円前後に収まることがほとんどです。ただし、この形式を選ぶ際には、注意点もあります。菩提寺がある場合は、お寺に何も連絡せずに直葬を行うと、その後の納骨を断られてしまう可能性があります。必ず事前に相談し、許可を得る必要があります。また、儀式を行わないことに対して、親族の中から「あまりに寂しい」「故人が浮かばれない」といった反対意見が出る場合も考えられます。事前に十分な説明と合意形成を行うことが、トラブルを避けるために非常に重要です。直葬は、経済的な負担を軽減するだけでなく、故人の遺志を尊重し、静かなお別れを望む家族にとって、意義深い選択肢となり得るのです。
最も費用を抑える直葬という選択肢