ご遺体の安置が終わり、少しだけ息をついた後、喪主には葬儀社との本格的な打ち合わせという、最も重要な仕事が待っています。この打ち合わせで決定する事柄が、葬儀の形式、規模、そして費用といった、すべての骨格を形作ります。悲しみの中で多くの決断を迫られる、精神的にも非常にタフな時間です。まず、葬儀社から提示されるのは「葬儀の日程」です。これは、喪主や遺族の希望だけで決められるものではなく、火葬場の空き状況、そして僧侶など宗教者の都合を最優先に調整されます。特に、友引の日には火葬場が休業することが多いため、カレンダーを見ながら、パズルのように最適な日程を組んでいきます。次に決めるのが「葬儀の形式と場所」です。親族や近親者のみで静かに行う「家族葬」にするのか、広く一般の方々にも参列していただく「一般葬」にするのか。会場は、葬儀社の自社ホール、公営斎場、寺院、あるいは自宅など、どこで執り行うのかを決定します。そして、打ち合わせの中心となるのが「葬儀プランと費用の決定」です。葬儀社は、祭壇のランク、棺の種類、返礼品、食事の内容などがセットになった、いくつかの料金プランを提示します。ここで重要なのは、提示されたプランに含まれるものと、含まれていないもの(追加費用が発生するもの)を、一つひとつ丁寧に確認することです。飲食費や宗教者へのお布施などは、通常、葬儀費用本体とは別にかかるため、総額がいくらになるのか、明確な見積もりを出してもらう必要があります。この他にも、遺影写真の選定、供花や供物の手配、会葬礼状の文章確認、受付などの手伝いを誰に依頼するかなど、決めるべきことは山積しています。喪主は、家族の意見に耳を傾けながらも、最終的な決定権者として、一つひとつの項目に対して、冷静に、そして迅速に判断を下していくという重責を担っているのです。