葬儀に参列できない際に送る弔電や、ご遺族にお悔やみの言葉を述べる時、故人が男性で、その奥様が喪主を務めている、あるいはご遺族としてその場にいる場合、私たちはその女性をどのように呼べば良いのでしょうか。他人の奥様に対する敬称の選び方は、故人やご遺族との関係性を示す、デリケートな問題です。最も一般的で、どのような相手にも失礼にあたらない敬称が「奥様(おくさま)」です。これは、相手への敬意を示す、広く使われている丁寧な言葉です。弔電の宛名を喪主である奥様の名前で出す際には、「〇〇(故人のフルネーム)様 御令室(ごれいしつ) 〇〇(奥様のフルネーム)様」とするのが最も正式ですが、文面の中でお名前が分からない場合は「奥様」とすれば問題ありません。口頭でお悔やみを述べる際にも、「奥様には、さぞお力落としのことと存じます」といったように使います。より丁寧で、改まった表現を用いたい場合には「ご令室様(ごれいしつさま)」という言葉があります。「令室」とは、他人の妻を敬って言う言葉で、特に書き言葉や、格式高い場面でのスピーチなどで使われます。「この度の〇〇様ご逝去の報に接し、ご令室様をはじめ、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます」といったように用います。また、少し柔らかい表現として「奥方様(おくがたさま)」という呼び方もありますが、やや古風な印象を与えるかもしれません。一方で、故人の妻に対して「お母様」と呼びかけるのは、故人の子供の立場からの呼び方であるため、第三者が使うのは基本的には不適切です。ただし、自分が故人の子供と非常に親しい友人であり、生前から奥様のことを「お母さん」と呼んでいたような特別な間柄であれば、その限りではありません。相手との距離感を測りながら、最も敬意が伝わる言葉を選ぶ心遣いが大切です。