身内に不幸があった際、遺族が最初に直面する問題の一つが「誰が喪主を務めるのか」ということです。喪主は、葬儀全体を取り仕切る遺族の代表者であり、その責任は非常に重いものです。では、喪主はどのような基準で決められるのでしょうか。法律で「喪主はこの人でなければならない」という明確な決まりはありません。しかし、日本の社会には、古くからの慣習に基づいた、一般的な優先順位が存在します。最も優先されるのは、故人の「配偶者」です。夫が亡くなった場合は妻が、妻が亡くなった場合は夫が喪主を務めるのが、最も一般的です。配偶者がすでに亡くなっている、あるいは高齢で喪主を務めるのが難しい場合は、次に故人の「子供」が候補となります。子供が複数いる場合は、長男や長女といった、血縁関係の最も近い年長者が務めるのが通例です。子供がいない、あるいはまだ幼い場合は、故人の「両親」、そして「兄弟姉妹」といった順番で、血縁の近い順に喪主が決められていきます。しかし、これはあくまで一般的な慣習に過ぎません。現代では、この慣習にとらわれず、故人の遺言によって指名された友人や、内縁関係のパートナーが喪主を務めるケースもあります。また、長男がいても、故人と同居していた次男の方が、地域の事情や親戚付き合いに詳しいため、喪主を務めた方がスムーズだ、といった現実的な判断がなされることもあります。最も大切なのは、家族・親族間でよく話し合い、全員が納得する形で代表者を決めることです。喪主を一人に決めず、兄弟で「共同喪主」とする形もあります。形式にとらわれず、故人を最も良い形でお見送りするために、誰が中心となるのが最適かを、冷静に話し合うことが求められるのです。